神に結界を張られる女_1
「出雲大社に行こうよ!」
九州にUターンしてきてから、高校時代の友人たちと何度プランしたか知れない。
しかし毎回、計画が本決まりになってくると、誰か一人が入院したり、どうしても仕事の都合がつかなくなったり、クルマを出す担当の人間に不都合が出るなど、どういうワケか頓挫してきた。
思えば東京に住んでいる頃、何度も何度も日光東照宮へ行こうと計画したが、結局果たすことができなかった。
大阪に住んでいる頃も、そう遠くはないのだからと伊勢神宮に行こうと計画するも、取引先会社の尻拭いで急な休日出勤になってしまったりした。
考えてみれば、有名な神のおわす聖地には、ことごとく嫌われてきたのだ。
友人曰く、「それは神様に嫌われてるんだよ。来るなーっ!て結界張られてるってことじゃない?」
カチンとくるが、こうも続くとあながち間違った考え方でもないような気がするのが不思議である。
そんな神様から嫌われているわたしが、とうとう出雲大社へ参拝できる機会に恵まれた。
誰かと一緒に行くから都合が悪くなるのであって、独りで行けばいいんじゃないかと思い立ったことがきっかけである。
北陸に住む友人に連絡をとり、それぞれがドライブして出雲大社へ向かい、現地で待ち合わせることにした。
約束した手前、何が何でも出雲大社に辿り着かねばならぬ!
クルマのメンテナンスは万全。
季節は晩春、週間天気予報も降水確率0%だ。
そうだろう、そうだろう。
そもそもわたしは晴れ女なのだ。
念のために前もって言っておくが、わたしは方向音痴ではない。
地図を読むのも得意だし、初めての道でも困ったことなどない。
それゆえにわたしは、カーナビなどというものを必要とはしていないのだ。
通常は。
それなのに、道中は山口県に入るなり何度か道に迷った。
迷うわけもない大通りでも違う道に入り込んだりした。
夜の山道で地図にない標識が出てきたときの焦りは尋常ではなかった。
そんなワケで、島根県に入ったのは深夜である。
こんなトラップもあろうかと、前乗り予定にしていて本当に良かった。
ビジネスホテルに入り、TVをつける。
天気予報は快晴、雨の心配はない。
わたしは安心して、疲れた身体をベッドに横たえた。
それが、だ。
友人と合流した翌日、雲ひとつない空のした出雲大社に到着したとたんの、土砂降り!
いやいや、この程度のことは想定内。
クルマに積んである傘を手に、参拝する。
参道に到着すると、横殴りだった雨が、強さはそのままに真っ直ぐ落ちはじめた。
大社までの並木に、さああーっと降り注ぐ雨、雨、雨。
それは荘厳という表現がぴったりの、いままで見たことのない神々しい風景だった。
「これはきみ、清められてるね」
友人が言った。
「・・・そうみたいだね」
いましがたまで横からぶつかってきた雨粒にびしょ濡れの姿で、わたしは答えた。
もう、さすがのわたしも疑いようがない。
わたしは間違いなく、神に結界を張られているのだ。
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