純朴っていいな
仕事で、長崎は浦上のとある交差点で信号待ちをしていた。
目の前には、長崎市内には珍しい自転車に乗った高校生くらいの少年がふたり。
ふたりは同じ方向、車道むこうの歩道を見つめていた。
「外人だ」
少年の言葉を耳にし、わたしも同じ方向を見遣る。
そこにはたしかに、ブロンドとブラウンヘアの外国人男子が、やはりふたりで信号待ちをしていた。
しかし、ここは長崎。
しかも進行方向の少し先には平和記念公園があるような土地柄である。
肌の色を問わず、外国人の姿はうっかり声がもれてしまうほどのレアキャラではない。
いったいなにがそんなに気になるのか。
わたしは何度も、目の前の少年たちと車道向こうに立つ外国人男子を交互に見比べた。
「かっこよかね」
「うん」
ふたりは顔を見合わせ、そう言った。
そして、後ろに人が立っていることに気づいていないのか、大きな声で続けた。
「いいなあー。おれ、外人になりてぇよ!」
わたしは意表を突かれて一瞬固まってしまったが、次の瞬間には出てくる笑い声を止められなくなってしまった。
ふたりはハッとした顔でわたしを振りかえった。
「うん、かっこいいよね(笑)」
ふたりはとても可愛らしい、はにかんだ表情でうなづいた。
信号は青になり、少年たちは自転車のペダルを踏み込んだ。
車道向かいの交差点では、話題の的である外国人男子たちが颯爽と歩みだした。
春らしい昼下がり、風のようにさわやかな短い時間を微笑ましく反芻する。
ここいらの少年たちはまだまだ純朴なんだな。
純朴かぁ。
いい響きだなあー。
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