バースデーケーキ

 

今年も、タイタン様生誕祭が全国で賑々しく催されていたようだ。

・・・たわごとでスミマセン。


端午の節句生まれである。


「わあー。ぜったい忘れられない誕生日だね!」

初めてわたしの誕生日を聞いた人は必ず同じことを言うが、これまた必ず、揃いも揃って当日はきれいサッパリ忘却の彼方。

仕方あるまい。
世間は楽しいゴールデンウィークの真っ最中なのだから。


そんなわたしのバースデーケーキは、毎年、長崎名物(?)鯉生菓子だ。
けっこうな大きさの練り切りである。

ブツ切りにして、熱いお茶とともにいただくと、これがまあ絶妙に旨いのである。


数年前の五月五日、まだ中学生と小学生だった甥姪が、母(わたしの姉)とともに我が家にやってきた。

手土産は鯉生菓子。
「切って、切って~」
甘えた声で渡してきた。


誕生日おめでとうの言葉はまだない。
食べる時に言うんだな。
うん、たぶんそうだろう。


例のごとくブツ切りにし熱いお茶とともに出すと、美味しいねえのコーラス。

「子供の日ならではだよねー」
「季節のお菓子は食べなきゃねー」
口々にのたまうのだった。


が、お祝いの言葉が出てくる気配はない。


「キミたち」

無粋と分かっていながら話しかけずにはいられない。

「わたしになにか言うことを忘れていやしないかね?」


「・・・あっ!」


わざわざ子供の日限定のお菓子を持ってきた「家族」に本気で忘れられていたのだった。


たいたん堂 ANNEX

日々の気づきと、好きなものと。