アチラの沙汰も
おととしのことだったろうか。
数年前に他界した父から電話があった。
「もしもし、お父さんだけど」
「・・・どした?」
「わき見運転してて、事故を起こしちゃったんだよ。なんとか示談にしてもらおうと思うんだけど、いま100万円くらい都合つくかな。まだ銀行開いて・・・」
「えっ!」
わたしは『お父さん』の声に、少々食い気味に声を上げた。
「天国って、運転免許なくてもクルマ動かせるの!?
てか、天国の沙汰も金次第なの!?」
ツー、ツー、ツーー・・・
『お父さん』は電話を切ってしまった。
我が家ではむかしから父親を「ちち」と呼び、母親を「はは」と呼ぶ。
そしてちちは、自分のことを「わし」と名乗る人だった。
だが、もしかしたらあの世できちんとした言葉づかいを再教育されたのかもしれない。
100万円用意できなかった『お父さん』は、ちゃんと事故の相手と交渉できたのであろうか。
あれから時が経ったいまでも、ときどき心配になってしまうタイタンなのであった。
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